日本銀行青森支店・武藤一郎支店長との対談

 

『物価を上回る賃上げ』県経済発展には必要不可欠!

 

 2024春闘交渉も大詰めを迎える中、県内地場中小組合の交渉支援に向け、4月24日(水)、物価の安定を図ることを通じて経済の健全な発展に資する立場にある日本銀行青森支店武藤一郎支店長を迎え、対談を行った。

 賃上げに対する重要性や価格転嫁の適正化が進む現在、県内の経済状況と雇用情勢について構造的データから見える認識や課題は一致。
 この物価高で県民の節約志向は強まり、消費スタンスは上がっていない現在、物価を上回る賃上げこそが所得と支出の好循環を生む起点となり、県経済の発展・活性化には必要不可欠という共通認識の下、対談が進んだ。

 対談の内容(抜粋)は以下の通り。

◆県内の経済発展・活性化に向けて
連合青森 賃上げが不可欠。賃金も物価も安定的に上昇するステージ転換を図る正念場の今春闘。これらを行うことにより労働力不足解消や賃上げの機運づくりを図り、更に未組織労働者へも賃上げの流れ波及させることが我々に課せられた重要な使命となる。労働力不足の中で「このままでは青森はだめになる」という強い思いを持ち取り組まなくてはならない。
日銀青森支店 経済の好循環を生むことは、県民が豊かになるために必要。日本銀行は長期の大規模金融緩和を続け、ようやく好循環に近づいたと判断している。県内経営者の方々も環境が変わってきているという認識を持ち、生産性向上や付加価値向上に取り組んでいただきたい。
◆価格転嫁・付加価値の必要性について
連合青森 値上げを許容する動きは広がりつつある一方、他社との競争激化や売り上げ減少の懸念、取引先との交渉難、また消費者の節約志向が妨げとなっている。賃上げ原資確保のために必要な適正な価格転嫁、違反した企業を公表する動きも始まっている。私たち消費者も良い製品やサービスにはそれ相応の値が付くことを認識すべき時期を迎えている。
日銀青森支店 今春闘の結果が消費者意識に変化をもたらすか注視していきたい。また価値に見合った価格、価格転嫁が進み、より効率的な生産が可能となれば、その分収益が上がるという認識を県内経営者の方にも前向きにとらえ、広がってほしい。
◆2024春季生活闘争の現状と見解について
連合青森 県内賃上げ額が過去最高の1万円の大台に達した。先行組合のサンデーやユニバースが大幅に引上げた結果であり、今後、地場労組も追随してほしい。
日銀青森支店

今春闘、日銀としても高い関心をもっている。青森支店で春闘前に行った企業アンケートで、8割弱の企業が賃上げする見込みと回答しており、賃上げ機運がどこまで続くか重視している。賃上げ機運が広がりを見せる背後に、人への投資・労働者への分配という経営者の意識変化の広がりも期待する。

◆2年連続賃上げの流れに期待すること
連合青森 新たなステージへ第一歩を切った昨年、そして2年目の現在。2年連続賃上げされれば3年目も、という予見性を経営者に持たせることが重要。それにより、これまでは人を財ではなくコストと捉え、コストカットにより経営を守る経営者が多かったが、これからは人への投資・優秀な人材確保策として展望を示し、賃上げもできる経営者が生き残る時代となる。
日銀青森支店 賃上げをすることは経済好循環の必要条件。内需型の県内企業には厳しい状況もあるが、今生じている変化を経なければ望ましい経済の均衡や県民の豊かさに到達しない。変化をとらまえて企業が新しい価値を見出せる様な環境になってきている。

この対談の様子は4月28日のデーリー東北新聞社朝刊の一面に掲載された。